まわりの涙が、痛くて罪だった

まわりの涙が、痛くて罪だった

並んだ花と知らない顔の列の前で、頭を下げ続けていた。大きな柱となる人を、突然失ったときのことだ。その日、涙は出ていなかった。悲しくなかったわけではない。ただ、あの場所で泣いていないのは、たぶん私だけだった。

優しさのかたちが重い

「さみしいでしょう」と、声をかけられた。日本語のはずなのに、外国語みたいに聞こえた。かけられる声はどれも優しかった。その優しさのかたちが重くて、息ができなかった。

まわりでは涙が流れていて、その涙が痛かった。ちゃんと悲しめている人の列に見えた。その列に、私は入っていなかった。

誰かの涙を数えていた

気がつくと、誰かの涙を数えていた。数えているうちに、私にも涙が出た。つられて出た涙だった。この涙は私のじゃない気がした。やっと出た涙は救いにはならなくて、罪がひとつ増えた気がした。

間違っているものはひとつもなかった

あの場の涙は本物だったし、かけられた優しさも本物だった。間違っているものは、あの場にひとつもなかった。それでも、いちばん息ができない場所だった。

おわりに

あの日のことを、思い出すことがある。最初に戻ってくるのは、自分の涙だ。つられて出たあの涙が、罪深い思い出として今も残っている。その記憶の中で、私は並んだ花と知らない顔の列の前に立って、頭を下げ続けている。

『Tearless』という歌は、いちばん悲しい日に涙が出ないまま、まわりの人の涙を痛みとして数えていた人の歌です。

Previous

Next