昼休みになって、弁当を出した。昼はいつも、この席で食べている。少し離れた休憩室には大きいテーブルがあって、何人かがそこで一緒に食べているのは知っていた。
ドアは開けてあることが多く、前を通れば話し声が聞こえる。
誘われたことはないし、断ったこともなかった。
食べる前に手を洗いに行った。
戻る途中で休憩室の前を通ると、テーブルに座っている何人かが見えた。
そのまま通り過ぎようとしたところで、テーブルのほうから苗字を呼ばれた。
「こっちで食べます?」
「あ、はい」と、返事は普通に出た。
端の椅子
席まで弁当を取りに戻って、テーブルの端の空いている椅子に座った。座るとき目が合った人がいたが、すぐに話へ戻っていった。
話は座る前から続いていて、途中から聞いても分かる話だった。
聞いていて、笑うところで笑った。
途中で一つ聞かれて、それには答えた。
楽しかった。
気がつくと、いつも席で食べるときより、食べ終わるのが遅くなっていた。
昼休みが終わると皆が立ち、自席に戻った。机の上は、出たときと同じだった。午後は普通に仕事をして、いつもの時間に帰った。
次の日の朝
朝、前の日に苗字を呼んだ人と廊下ですれ違って、「おはようございます」と言い合った。
昼のことは向こうも言わなかったし、こちらも言わなかった。
それだけで、あとはいつも通りだった。
そのあとは、それぞれの席で午前の仕事をした。
昼休みになると、まわりの席の人が立ち始めた。
何人かは休憩室のほうへ歩いていき、席を立たずに食べ始める人もいた。
自分の席には、誰も来なかった。
弁当を出して、机の端に置いた。
休憩室の前
弁当を持って、席を立った。廊下を歩いて休憩室の前まで行くと、ドアは開いていて、中では昨日と同じ人たちが話していた。
端の椅子は空いていて、誰もこちらを見ていなかった。
外に立っているのは自分だけだった。
そこで足が止まった。
入って一言言えば座れることは、自分でも分かっていた。
今日ここに入れば、昨日誘われたから来た人になる気がした。
向きを変えて来た廊下を戻り、席に着いた。
昼休みの終わり
自席で弁当を食べた。
休憩室のほうから、昨日と同じ笑い声が一度届いた。
呼ばれれば座れるのに、呼ばれない日は、その前まで行っても自分からは入れない。
食べ終えて片づけたころ、戻ってきた人たちが自席の横を通ってそれぞれの席に着いていき、隣で椅子を引く音がして、自分は午後の最初の画面を開いた。
そこには、午前の続きが残っていた。
『Out of Sync』という歌は、まわりの人が楽しそうに見えて、その輪に入りたいのに自分からは踏み出せず、取り残されたような孤独に蝕まれていく人の歌です。






