仕事を終えて駅に着き、ホームのいつもの位置に立った。
表示を見ると、電車が来るまでにはまだ何分かあった。
階段を上がってくる人の流れを何となく見ていたら、その中に知っている顔があった。
昔からのグループの一人だった。
半年前、通知が煩わしくて自分で退出した。
誰にも言わなかったし、誰からも聞かれなかった。
それからは何も届かなくなって、楽になったと思った日もある。
その人はまだ気づいていない。
柱の反対側へ動けば済む距離だった。
鞄を持ち直して一歩動きかけたところで、向こうが先に気づいて、手を振った。
そのまま、こちらへ歩いてくる。
「最近全然見ないね」
「久しぶり、最近全然見ないね」
「うん、ちょっと忙しくて」
忙しくはなかった。仕事のほかに予定が入った日は、ここのところほとんどない。
それでも口から出たのはその言葉で、向こうは「そっか」と頷いた。
その人は、この春に職場が変わったのだと短く言った。
後ろから来た人たちが、まわりに並んでいく。
抜けたことには触れてこないし、こちらからも言わなかった。
どこで見ないという意味なのかは聞かないまま、会話は普通に続いていた。
「来なよ」
次の電車の到着を知らせる表示が出た。
向こうが「今度また集まるから来なよ」と言った。
「うん、ぜひ」
返事はすぐに出た。
そのあとで、行きたい、と思った。
半年前に自分から抜けたのに。
その人は「じゃあ」と手を上げて、ホームの端の階段を上がっていった。
こちらも軽く頭を下げた。
そのあいだに、戻してほしいと頼む言葉は出てこなかった。
電車が入ってきて扉が開き、降りる人を待ってから乗った。
一覧
扉の横に立って、鞄からスマホを出した。
トークの一覧を上から順に見ていく。
会社の連絡がいくつかと、このごろやりとりした何人かの名前が並んでいる。
下まで行っても、あのグループの名前はどこにもなかった。
自分で消したのだから、当然だった。
戻る入口は、誘ってもらう側にしかない。
戻してほしいとは、自分で抜けた側からは言えない。
今度がいつなのか、その連絡が来るのかどうかは、相手が決めることになった。
一覧を閉じて、スマホを鞄にしまった。
降りる駅
次の駅で何人かが降りて、乗ってきた二人連れが話しながら隣に立った。
仕事の話らしく、電車が動き出してもそのまま続いていた。
吊り革を持って、聞くともなく聞いていた。
降りる駅が近づいて、扉の前に立った人の後ろに並んだ。
扉が開いて、ホームに降りる。
上り口の案内表示を見て、いつもの階段へ向かった。
『Runaway Echoes』という歌は、人が煩わしくなって「一人がいい」と言っていたら本当に一人になって、その静けさの中で後悔していく人の歌です。






