今日は表を一つ作っていた。午前のうちに形だけ整えて、昼を過ぎたころには数字が半分ほど入っていた。急ぎのものだとは聞いていない。
途中で一度、やり直している。最初の形だと数字がうまく並ばなかったからで、そのぶん時間はかかった。誰にも言っていない。
本当は、昨日のうちに終わるはずのものだった。
先輩が横に立って、画面をしばらく見ていた。
「あとはこっちでやっておきます」
「ありがとうございます」と言って、ファイルを閉じた。理由は言われなかったし、こちらからも聞かなかった。先輩は自分の席に戻っていった。
それで、今日やることがなくなった。
まだ三時前だった
たまっていたメールを片づけて、明日の分の準備をした。それも終わってしまうと、頼まれてもいないところに手を出すほどのこともなかった。席を立って、コップに水を汲んで戻った。
隣ではキーボードの音と、短い電話の声が普通に続いていた。
たぶん、自分が遅かったんだと思う。
夕方に残っていたのは、来週配る紙をそろえてホチキスで留めるだけの作業だった。部数は紙に書いてあったが、それでも一度は自分で数えた。順番を確かめて、端を揃えてから留める。留めたものは一組ずつ机の端へ寄せていった。
急ぐ理由はどこにもないのに、いつもより時間をかけていた。書いてある数と合っていたのに、もう一度数え直した。
終わらせてしまうのが惜しいような気がしていたが、なぜなのかは自分でもよく分からなかった。
更新者の欄
朝、席に着いてすぐに共有フォルダを開いた。昨日の表は、終わったものを入れる場所に移っている。更新者の欄には別の名前が入っていて、自分の名前はもうそこになかった。
開いてみると、入力した行はそのまま残っていた。数字の書き方が少しだけ直されている。
それだけ確かめて、閉じた。
隣の人は、昨日と同じ画面を開いて、続きから始めていた。
遅かったからなのか、たまたま先輩の手が空いていただけなのか。聞けば分かるのかもしれない。
聞かなかった。
ありがとうございました
昼前、廊下で先輩とすれ違った。
「昨日はありがとうございました」
「ああ、あれですね。もう出してあります」
先輩はそう言って、そのまま今日の予定の話に移った。手元の紙を見ながら、明日の分のことを二つほど言われた。「はい」と返した。声は普通に出た。
手伝ってもらったのだから、ありがたい話だ。
それは分かっている。
それでも、礼を言っているあいだ、頭の中にあったのは、次に何を任せてもらえるのかということだけだった。
次に同じような仕事が回ってくるのかどうか、それだけを聞きたかった。口には出さないまま、先輩は先に廊下を曲がっていった。
おわりに
昼を食べて席に戻ってからも、午後は普通に過ぎた。新しく頼まれるものはなく、決まったことを決まった順にやって、終わりの時間が近づいた。
特に用はなかったが、共有フォルダをもう一度開いた。昨日の表のところまで、一覧を下げていく。
更新者の欄には、昨日の日付と別の名前が並んでいる。
その行には触らないまま、フォルダを閉じた。
机の上には、留め終わった紙の束がそのまま置いてある。配るのは来週だった。
『unfelt』という歌は、いくらちゃんとやっても出来ていないように思えて、何をやってもできている気がしない人の歌です。






